iPAQ Pocket PC h1920 インプレッション

日本hpが国内販売はないといい続けてきたiPAQシリーズのローエンド機h1900シリーズが,「ついに」というか「ようやく」というべきか発売になりました。

このページは私がh1900シリーズの日本語版「iPAQ Pocket PC h1920」を1週間程利用する過程で,気付いたことや感じたことを網羅的に書き留めたものです。

ポイントを押さえたインプレ記事を読みたい方は,参考リンクにあげた他サイトのインプレ記事もしくは,本記事摘要(サマリー)ならびに総括をお読みになることをオススメします。

またカタログスペックが気になるという方は,以下の参考リンクをご利用ください。

(記事公開日:2003/06/16)

参考リンク


はじめに

iPAQ Pocket PC h1920
iPAQ Pocket PC h1920

h1920はiPAQの『慣例』に習ってか,英語版のh1910発表(2002/11/18)から発売(2003/06/02)まで実に半年を要したモデルです。

一昔前であれば秋葉館PDAなどのPDA専門ショップで(英語版の)実機に触れられる機会もあったのですが今ではそれもなく,長く個人輸入した人だけしか手にできない(≒目にできない)という状況が続いていました。

したがって入手できる情報は,主に海外サイトのレビュー記事になるわけです。
そのひとつ(Brighthandに掲載されているもの)にこんな下りがありました。

曰く。「初代iPAQ以来,最も重要なPocket PC」(意訳/霧島)

私自身,CLIE PEG-T600Cなどを愛用していたこともあって,小型軽量モデルへの強い憧れ(というか需要)もありましたし,スペックや比較写真をみた段階で小さなマシンだということは頭ではわかっていましたから,論旨が理解できないわけではなかったのですが,正直「それは大げさだろ」と思ったものです。


で,時は巡って5月の末。偶然にもh1900シリーズの国内投入決定を知り,同時に実機を目にする機会に恵まれました。

実際に目にし手にとって,真っ先に思い浮かんだのは,件のレビュー執筆者への謝罪だった……というのは冗談ですが,記事内容に初めて得心がいくとともに私が求めていたマシンはこれだ!と強く感じ,その場で購入を誓う程度には衝撃的な出会いでした。

本サイトのインプレの通例にしたがって初めに結論を書いてしまいますが,本機の魅力はPIM用途に特化していた時代のPalm機ばりの小型軽量ボディに,Pocket PCの基本機能を削ることなく納めている点。極論すればこれにつきると思います。
# 通信機能も『無い』わけではありませんしね。まぁ,日本では無いも同然であることは否定しませんが(^^;

そして24,800円という低価格モデルでありながら,液晶のサイズ,表示品質,タッチパネルの精度,ボタンの操作性,筐体の質感などユーザが直接触れる(ハードウェア的なユーザインターフェース)部分や,実用上問題ないレベルの動作速度と駆動時間,交換可能なバッテリといった,使用感に直結する基本部分は全て高レベルに保たれている点も見逃せません。

しかも他機種は叩き売りを除けば,5万円台以上が主流なご時世に,です。
# 上であげた個々の要素を比較した場合,価格を抜きに考えてもh1920より勝っている機種は少ないあたり,なんともトホホな感じではあります……

もちろんこのサイズ,価格を実現するために切り捨てられたもの……CFやSDIO,シリアル通信のサポート,RAMのユーザ領域,CPUパワーetc.も存在します。

以降本記事ではh1920の個々の要素ごとに,優れた点,劣ったあるいは欠けた点を詳しくみていくわけですが,それらを参考に読者ひとりひとりが必要なものと不要なものを見分け,本機が利用スタイルに適した,もしくは適さないマシンであることを判断してもらえればと思う次第です。

サイズ,重量

カセットテープとのサイズ比較
スリムケース採用のカセットテープと大体同じくらいの大きさ
E-500とのサイズ比較
E-500と並べて。こんなに小さくなりました
厚さ比較
厚みの違いはこんな感じ

価格と並んで本機の最大の特徴であるサイズと重量ですが,歴代Pocket PC中最も小さく,そして最も軽いマシンに仕上がっています。
# 海外ではSamsungが開発したモノクロモデルをDellが販売するという話もでているようですので,これの国内販売があるようなら逆転されてしまいますが(^^;

他のサイトではPalmのVxとの比較写真が多くでていることからもわかる通り,従来のPocket PCとは別次元の小ささと薄さ,軽さといってよいでしょう。

カタログなどで数値をみている分には「ふ〜ん。小さいんだねぇ」といった感想どまりなのですが,実物は「うわっ。こんなに小さいんだ」と思わせるだけのインパクトを持ったマシンです。
Palm機と違いGraffitiエリアがなく大きな,しかも発色も鮮やかな半透過型液晶が前面に搭載されていることも,その印象を強めています。

なお,筐体サイズが変更になっていることからもわかるとおり,従来のiPAQシリーズで継承されてきたジャケット類には一切対応していません。

サイズ重量共に,Yシャツの胸ポケットに無理なく入れられますから,本当の意味での『Pocket』PCがようやく登場したといっても過言ではないでしょう。

また,小さいだけでなく角を落とした台形型の断面形状になっているため,握りやすい点も見逃せないポイントといえそうです。

ちなみに筐体の組み立てに使用されているネジはiPAQ伝統のトルクスで,分解防止シールがバッテリケース内に貼ってありました。

見た目のインパクトに関しては,いくら言葉を重ねても比較写真を掲載してみても,実感してもらうことは難しいので,可能であれば『数少ない』展示店舗に足を運んでみることをおすすめします。

サイズ/重量比較

おまけ

動作速度

初代iPAQとのサイズ比較
初代iPAQと並べて
同厚さ比較
厚さも結構違います

通信手段の有無とともにネックに感じている人が多いのが,ハイエンドマシンとのCPUクロックの差ではないでしょうか。

私の率直な感想としては,ハイエンドモデルと比較すると確かに遅い場面もあるが十分実用的な速度で動作していると感じました。
# もっとも本機の場合,檄重の「Pocket Internet Explorer」を使う機会がないことが影響しているという説もありそうですが(^^;

特に動画に関しては,英語版(h1910)の新ロットと同様にPXA255にCPUが変更になっている(クロックは200MHzのまま変更ナシ)点が大きくプラスに働いている気がします。
# h1910は当初PXA250を搭載していましたが,最新ロットではPXA255に(こっそり)変更されました。

アイコンの読み込みやファイルコピーなど,メモリの読み書きがちょっと遅いのかなと思える場面もありますが,使っていて遅くて我慢ならないという程ではありませんね。
# 遅さが気になる場面でもCASSIOPEIA E-700(VR4122 150MHz/以後E-700)並か,気持ち早いくらいだと思います。


また用途によっては,StrongARM 206MHzやPXA250 400MHzよりも高速に感じられるシチュエーションもあるようです。

たとえばPXA250 400MHzと比較した場合,私にとってのキラーアプリケーション「えここdeふぁいと!」(アクションゲーム)などで,ほぼ同等か気持ち(5fps程度)優秀な結果が出ています。
# 上下幅は60〜30fps程度で,処理が重いところ以外は40〜50fps安定。

なおPXA255 400MHzを搭載したCASSIOPEIA E-3000(以降E-3000)ではなぜかフレームレートが安定しなかったため,CPUの特性かとも考えていたのですが本機では特にそういった症状もありませんでした。
# CPU以外……たとえばボタン検出などに原因があったのかもしれませんねぇ。 <E-3000

エミュレータに関しては,GameBoyレベルであれば音ありでも等速(以上?)で動作するようですし,PXA250 400MHzより優秀といってよい気がします。
# ものが古いですが,例によって「PalmGB」にて確認。


先に少しふれた動画再生に関しては,PXA255 400MHzと比較した場合当然見劣りしますが,StrongARMよりは期待できるといった感じでしょうか。

E-3000のインプレと同条件で「PocketMVP」を利用した再生テストを行ってみたところ,以下のような結果になりました。
# 条件及びE-3000(PXA255 400MHz),hp jornada 568(StrongARM 206MHz)の結果はE-3000のインプレからの引用。

PocketMVPの設定は「Show dropped frame」に加えて「No AVI Index」と「Enable Cache」(最大の12MBを指定)をONにしています。

上記MPEG-1のテストと同じソース(b4-demo_hp.mpg)をDivX 5.0.3(とMPG2AVI,GOGO.DLLの組み合わせ)で映像320*240/500kbps/30fps,音声22kHz stereo 64kbps(FileSize 11.0MB)にエンコードした場合…

E-3000ではDropped:100/Played:4620/Total:4620/Avg FPS:29.35。
j568ではDropped:3310/Played:4620/Total:4620/Avg FPS:8.51。
という結果になりました。

その後も色々と試してみましたが,オンメモリ(キャッシュにムービー全体が納まるサイズ)でない場合,利用するメディアの転送速度にもろに足を引っ張られるようです。

私の手持ちメディアは1GBのmicrodriveにSanDisk製CF,SDと低速なものばかりでまったくお話にならないので,残念ながら動画再生に関する実験はこれで打ち切りとします。

h1920テスト結果 Dropped:2346/Played:4620/Total:4620/Avg FPS:14.77

また標準搭載ソフトの「Windows Media Player 8.5」(以下WMP)の場合,「Windows Mediaエンコーダ 9 シリーズ」を利用してPocket PC向けプロファイルを利用して変換する際,「Pocket PC ワイドスクリーン ビデオ」を選択して作成し,フル画面再生を行うとさすがに厳しいものがありましたが,「Pocket PC 標準ビデオ」で作成した通常サイズのものであればほぼ問題なく再生可能でした。
# ARMと同等,PXA250よりはやや優秀といったところでしょうか?


なお,CPUクロックは200MHz固定で,クロック変更に関しては標準状態ではサポートしていませんが,「Speed Stepper」や「Turbo Tray」といったh1910向けのクロックアップソフトが利用できるようです。
# 当方の環境では300MHz駆動はおおむね安定。400MHzはフリーズ→フルリセット直行でした(^^;

一応参考までに,各クロックでの「BMQ」によるベンチマーク結果を載せておきます。
ちなみに,面倒なのでベンチを取る前に初期状態(フルリセット)に戻したりは『していません』のでご注意を。

3.5inch 半透過型カラーTFT液晶(QVGA)

液晶輝度比較
反射型液晶(j568)との輝度比較。共に輝度最大
バックライト設定画面
バックライト設定画面
輝度調節はOFFを含めた5段階

大きさ,価格についで本機の3番目の長所ともいえるのが,3.5inchの半透過型16bitカラー液晶の存在でしょう。

室内,屋外問わず外光の影響を受けにくい半透過型液晶は,H3900シリーズやE-3000に勝るとも劣らない表示品質を実現しています。
# 半透過型液晶=美しい発色ではない点には注意。まぁ,最新のものなら基本的に間違いではないとは思いますが(^^;

わずか120gの筐体にE-3000やhp jornada568(以降j568)などと同等の3.5inch液晶を搭載している点も立派です。
# 従来のiPAQシリーズは3.8inch液晶なので,それと比べると少々小さくなっています。

解像度は当然QVGA(320*240)のままですが,このくらいの本体サイズであればさして不満もでないのではないでしょうか。
# 本機の場合,解像度が最も必要とされるであろう通信(Web閲覧)向きの端末でもありませんしね。

発色に関しては,肌色などを見ると「もうちょっと派手な色味でもいいかな?」と思わないでもないですが,文字情報の閲覧が主であることを考えれば落ち着いた発色はかえってプラスといえるかもしれません。
室内で透過型液晶の横に並べて比較でもしない限りは,まず不満は出ないレベルといってよいでしょう。

なんにせよ,これまでPocket PCで主流だった反射型液晶とは比較にならない美しさであることは確かです。

ただ,私のマシンの個体差かもしれませんが,バックライト輝度を下げると画面下にバックライトの照射ムラ(?)があるのが確認できました。
# めくじらたてる程のものではありませんが,一応。


なおiPAQ伝統のバックライト輝度の自動調光機能は省かれており,輝度調節もOFFを含めた5段階と最低限のものとなっています。
# せめてCASSIOPEIAシリーズのようにボタン操作で簡単に輝度が変更できれば,便利だったのですが。

バックライトは最大輝度ではまぶしい程で,最低輝度(=2目盛目)でも十分明るいため,駆動時間を重視したい人はこの状態で利用するとよいでしょう。
# 当然ですが輝度によって駆動時間がかなり違ってきます。私の場合輝度を下げている分,常にバックライトをONにした状態(タイムアウト未設定)で利用中。


液晶保護カバーなどの液晶画面保護対策は何もありませんが,iPAQの伝統に則って液晶画面がやや奥まって配置されていますので,胸ポケットなどに入れている分には特に気をつかう必要はなさそうです。

ただし,バッグやズボンのポケットなどに入れたいひとは,本体サイズの小ささをスポイルしてしまうことになりますが,ケース類を利用した方がよいかもしれませんね。
# ちなみに「Vis-a-Vis」や「pocketgames」でメタルケースの取り扱いが始まっていました。


余談ですが本機の液晶は微妙に左側にオフセット配置されているため,左右非対称のデザインとなっています。
# 案外液晶の問題ではなく,スタイラスの収納スペースの問題なのかもしれませんね(^^;

バッテリ周り(メインバッテリ/メモリ バックアップ バッテリ)

本体裏面
本体裏面
左側面中央にカバー取り外しボタンが確認できます
本体裏面バッテリカバー取り外し時
カバーを取り外したところ
カバー内右上の丸で囲んだ部分が開閉検知スイッチです
電源設定
電源設定
サスペンド設定のはずがなぜかバックライトとなっています

交換可能なリチウムイオン充電池と,メモリバックアップ用の内蔵型ニッケル水素充電池を搭載しています。

メモリ バックアップ バッテリは,残念ながらユーザによる交換を想定した作りにはなっていないようです。

交換可能なメインバッテリはj568などとは異なり,バッテリカバーとバッテリ本体が別になったタイプのため,素早い交換に適しているとはいえない上,容量も900mAhとやや控えめな数値になっています。
しかしPDAがバッテリが切れてしまえば箱にも劣る存在である以上,バッテリが交換可能であるというのは大きなアドバンテージといってよいでしょう。

肝心の駆動時間ですが,私の利用環境(テキスト閲覧を中心に,気分転換に音楽やゲームを少し楽しむ程度)では,バックライトを最低輝度(2目盛目)にした状態で『連続』6時間以上利用することができました。
# バッテリ警告は30%を下回った時点で出る模様。

また恒例のWMPを利用したWindows Media Audioの連続再生テスト(64kbps,画面OFF,ボリューム50%,標準添付のヘッドフォン使用,リピート再生,ソースには「ZUNTATA LIVE 1997-CINETEQUE RAVE-」をリッピングして使用,残量15%を切った時点で警告ダイアログが出て演奏停止)では,7時間13分となかなかに優秀な結果を納めています。

H3900シリーズやE-3000にはかなわないものの,j568と同程度の駆動時間を実現しているといってよいでしょう。
# WMPの連続再生では負けてますが,このあたりは単純にバッテリ容量の差でしょうね。
# 逆にいえば半透過型液晶と反射型液晶のバック(orフロント)ライトの消費電力差のおかげで,少ないバッテリ容量でも同等の駆動時間を実現できたともいえそうですが。

通信にほとんど利用できないことを考えれば,動画の連続再生やゲームなどで酷使しない限り,スペアバッテリを用意しなくても終日利用できそうです。

なお,バッテリカバーはペラペラのプラスチック板で精度も高いとはいえないのですが,本体側メッキ塗装との質感の違いや段差をデザインとしてうまくごまかして取り込んでいる点は面白いと感じました。
# このあたり,精度重視の国内メーカとは発想が違うなぁとちょっとだけ思ったり。

精度云々とは書きましたが,カバー類の着脱は容易で悪くない作りです。
バッテリカバーの内側には開閉検知スイッチが付いており,取り外した状態では本体電源はONに出来ないようになっています。
# バッテリカバー リリースボタン(カバー取り外しボタン)とは連動していません。


それと1点。スタートメニュー→設定(システムタブ)の「バックライト」と「電源」の双方に「デバイスを使用していない時にはバックライトを切る」という設定項目が存在しているのですが,おそらく「電源」の方のそれは自動サスペンド設定の誤りではないかと思われます。
# 「デバイスを使用していない時には電源を切る」の間違いじゃないかな〜とか(^^;

メモリカードスロット関連

本体上面
本体上面
左からスタイラス,SDスロット,マイク,オーディオ ジャック
SDスロットの蓋はダミーカードタイプです

本体上面中央に,日本市場における本機の最大の弱点であるところの『SDIO非対応』のSDスロットを1スロット備えています。

PXA255にはSDIOに対応したSDコントローラが搭載されていたはずなので,ドライバ開発及び検証コストを削減したということなの『かも』しれません。

発売まで半年も引っ張った上,結局発売するのであればドライバを開発してもらいたかったところですが,ローエンド機という性質上難しかったのかもしれませんね。
# ハードウェア面で不足がある可能性もあるでしょうし。

ただ,この弱点のおかげで赤外線及びUSB接続(によるActiveSync経由)以外の通信手段を備えていないことになってしまい,パワーユーザへのアピールが弱くなってしまった点は残念な限りです。
# SDIOに対応していれば,BluetoothカードやAirH"対応端末「AH-S101S」が利用できる可能性がありましたからね。

6月末に英語版が登場予定のh1900シリーズの最新機種ではSDIOのサポートに加え,Bluetoothも搭載と通信面の弱さが払拭されているという話ですので,日本市場への『早期』投入に期待したいところです。
# もっともCPUがSamsung製のものに変わっているのが,パフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかが気になりますが……


SDIO非対応ということで自動的にSDストレージカード専用のスロットということになるわけですが,転送速度や信頼性を考えるとPanasonicブランド(OEM品含む)の大容量製品が良いでしょう。
# 私は予算の都合でSanDiskのしか持ってませんが(苦笑)

1スロットしか無い以上512MBのものを奢ってやりたいところですが,h1920の場合『本体価格を超えてしまう』のが悩ましいところです。
256MBを2枚買って,用途に応じて使い分けるのが現実的かもしれません。
# 辞書データ,地図データ,音楽データなどを詰め込もうとしなければ,256MBで十分ですけどね(^^;

メモリ関連

メモリ設定
メモリ設定
メモリ総量(=ユーザ領域)が64MBではないのがわかります

メモリ周りは従来のPocket PCと比較して,やや特殊な構成になっているので注意が必要です。

RAMの搭載量は現在の標準ともいえる64MBになっているのですが,FlashROMが従来のNOR型からNAND型に変更になった関係で,RAM領域の一部がOSの予約領域として占有されており,実際にユーザが利用できる領域は34MBに制限されています。
# NOR型の場合FlashROM上のデータを直接実行できるが,NAND型の場合(速度が遅いため)一端RAM上に展開する必要がある……らしいです。

この少ないユーザ領域をさらにストレージ用途の「データ記憶用」と,プログラム実行領域の「プログラム実行用」に割り振ることになります。

64MB以上のメモリに慣れた身からするとやや手狭な印象もありますが,Pocket PC 2000の頃は32MBが主流だったわけで,それよりは2MB程余裕があると考えるとよいかもしれません。
# 何事もポジティブシンキングは重要です(笑)

また本機の場合SDスロットを通信用途に利用できないため,通信系のアプリを1スロットしかないSDカード側に逃がすことができるのも大きいですね。
# 「NetFront v3.0」などは本体メモリにしか導入できませんが,h1920に入れるメリットはあまりないでしょうし(^^;

ただ,通信手段が少ないだけに「HandStory」などのWebクリッピングソフトのお世話になる機会が多いことが予想されますが,HandStoryはプログラム実行用メモリの空きが大きい方が安定動作する印象があるので,利用頻度の低いソフトは積極的にSDカードに逃がすなどの工夫が必要になるかもしれません。

とりあえずの指針としては,動画再生ソフトや辞書,地図ソフトなど巨大なデータファイルの利用が前提となるソフトは本体ごとSDカードに回してしまうのが現実的でしょう。
# 私の場合上記に加え,「Pocket WZ Editor」(以下PWZ)のTXC関連ファイルをマクロの実行に必要な「TXC.DLL」以外,SDカードに退避してしまいコンパイル時のみ本体側に書き戻すことで容量を稼いだりしています。

おまけ(筆者導入環境)

本体側

Spb Pocket Plus/VITO ButtonMapper/PocketTweak/Pocket WZ Editorマクロ色々)/ファイルエクスプローラの友/Namo HandStory/Resco Picture Viewer/TOMBO/TRAIN/mp edit/Agenda Fusion/ezyUnZIP/Turbo Tray/G's Clock/AbsoluteSimpleClose/CabInstl by SK/Smart.lnk/PHM Registry Editor/TascalLHA/Nyditot Virtual Display

SD側

えここdeふぁいと!/システムソフト POCKET辞典(色々)/Kuri Clock/モバイルアトラス/幻彩2/nPOP/ぽけギコ/Q.Browser/T-Time Viewer/ブンコビューア/Abalone/ICBM/なにクラ体験版/PalmGB/PocketChess/PocketKobo/DicTool/PocketMVP/PocketTV/TascalRegEdit/WIMR?


メモリといえば謎がひとつ。h1920は英語版のh1910と同様16MBのROMを搭載していることになっているのですが,h1910ではWMPや「MSN Messenger」がROM搭載されず別途CDからの導入になっています。
日本語版ではフォントなどでOS周りだけでも肥大化しているはずなのですが,h1920ではこれらのアプリも標準で搭載されています。本当に16MBのROMに納まっているのでしょうか?

RAMのユーザ領域は肥大化分しっかり減っている(h1910のユーザ領域は48MB)のですが……謎です。
# 「アセットビューア」(デバイスマージャのようなアプリ)では確かにROM 16MBとなっていますが,「リファレンス ガイド」掲載のスペック表には16MB以上と書いてあったり。
# ま,RAMに関しても64MB以上と書かれているので単に仕様変更(の可能性)に対応するためのマージンなのでしょうけれど(^^;

各種ボタン周り

5Way ナビゲーション ボタン周辺
5Way ナビゲーション ボタン周辺
写真ではわかりづらいですがアクションボタン部分は別パーツになっています
カーソルボタン部分の周囲の隙間がスピーカ穴です
本体左側面
本体左側面
左からストラップ取り付け穴,赤外線ポート,録音ボタン,リセットボタンが確認できます

冒頭にも書きましたが,本機はボタン類の操作性が優れている点も隠れた長所のひとつといってよいでしょう。以下各ボタンについてみていきましょう。

5Way ナビゲーション ボタン

本体前面中央下部に配置されているボタンで,上下左右カーソルボタンとアクションボタン(決定/Enter)の機能を備えています。

中央押しでの決定動作は初代iPAQからの,ある意味悪しき伝統ともいえるものですが,本機の場合携帯電話やGENIO e550C(以下e550C)のように中央のアクションボタンが分離しているため誤動作しにくくなっているのがポイントです。

同様の機構を備えるe550Cの場合カーソルの上下幅が狭くボタン自体も小さいため,決して操作性がよいとはいえませんでした。
しかし本機の場合,カーソルの周囲のはり出し(高さ)が十分な上,適度な大きさとクリック感があり,中央部分がすり鉢状に大きくえぐれていることも手伝って,誤動作の心配なく的確な操作を行うことができます。

アクションボタン自体も十分出っ張っているので,やや指を立てて押す必要はあるものの押しにくいといったことはありません。
ボタン形状が半球になっているため,カーソル操作時に指に引っかかって誤動作しにくくなっているのもポイントです。
# 頂点部はカーソル外周とほぼ同じ高さ。

手先の器用さは人それぞれでしょうが,少なくとも私にとっては十分操作性がしやすく,誤動作のないボタンに仕上がっていると感じました。
# 実際1週間利用していて,誤操作したことは1度もないです。

ただ,カーソルボタンの押し心地がやや固めなので,頻繁なスクロール操作を行ったり,アクションゲームを長時間プレイした場合指が痛くなりそうな点はややマイナスかもしれません。
# j568くらい柔らかい方が個人的にはありがたかったかも。j568に比べてカチャカチャと大きな音がしないのはうれしいところですが……

なお,カーソルボタンの斜め押し,同時押しにも対応していますが,アプリケーションボタン(後述)との間隔が詰まっているため,ゲームプレイ時にはやや窮屈に感じられると思います。
# ボタン自体の操作性は既に述べたとおり悪くないです。シューティングゲームもOK。

細かい不満はありますが,現行機中ではトップレベルの出来といってよさそうです。
# j568に一歩ゆずる程度。

アプリケーションボタン

5Way ナビゲーション ボタンの左右に2つずつ並ぶ形で配置されているボタン群。
マニュアルをみると左から,予定表ボタン/連絡先ボタン/受信トレイ ボタン/Todayボタンとなっていますが,以下通例に則ってまとめてアプリケーションボタンと呼称します。

で,肝心の押し心地ですが,適度なクリック感があり非常に押しやすいです。
周囲に誤動作防止ガイドのようなものは特に用意されていないのですが,5Way ナビゲーション ボタンがかなり出っ張っているので,ポケットの中で勝手に押されてしまうことはほとんどないようです。
# バッグの中などでは誤動作しそうですが,この場合むしろ液晶の保護の方が心配です(^^;

同時押しや2度押しといった,1つのボタンに複数のアプリケーションを割り当てるための工夫は一切ありませんので,不満なひとは「VITO ButtonMapper」や「BtnPlus」などを利用すると良いでしょう。
# VITO〜もシェアウェアながら,機能限定のフリー(LITE)版があるようなので,意外とオススメかも。

余談ですが各ボタンのアイコンはモールドではなくペイントなので,はげる可能性もありそうです。

録音ボタン(ボイスレコーダボタン)

本体左側面上部に赤外線ポートと並んで配置されています。

誤動作防止のため気持ちくぼんで配置されていますが,位置確認用(?)のポッチがついているため押しにくい感じはあまりありません。

偽ジョグダイアルことアクションコントロールのような,スクロールボタンに相当するものがないのは残念です。
私の場合VITO ButtonMapperを利用して通常押しに↓,長押しに↑カーソルを割り当てて利用していますが,そこそこ便利に使えています。
# この用途だと「SoftwareActionControl」を使うのが王道でしょうね。

電源ボタン

本体前面上部中央,j568の通知ボタンに相当する位置に配置されており,電源とアラームのランプ(インジケータ)を兼ねています。

デザイン的にh1900シリーズにj568の面影を感じる最大の要因でしょう。
# j568のように画面OFFボタンには利用できませんが,長押しでバックライトを消灯することは可能です。

AC利用時はオレンジに点灯。充電中はオレンジの点滅。アラーム動作時はグリーンに点滅します。

充電完了後は消灯となってしまうマシンも多いのですが,これだとACアダプタがつながっているのか判別しづらいのでうれしい仕様といえるでしょう。

また,従来のiPAQと違い本体を胸ポケットに入れた状態でも,上からアラーム動作時の点滅を確認できるのもありがたいところです。
これでバイブレーション機能がついていれば完璧だったのですが,少し残念です。

リセット ボタン

本体左側面下部の穴がリセット ボタンになります。

スタイラスの後端部分がPalm機ライクにねじ込み式になっており,ここにリセットピン『らしきもの』が用意されているのですが,これを使わなくても普通にスタイラスのペン先で押すことが可能です。

内部構造的に直接スイッチを押すのではなく,本体フレームの一部を押し込んでてこの原理でスイッチを作動させる形になっているため,やや粘っこい押し心地ですが動作自体に特筆すべき点はありません。

なお,フルリセットは電源ボタンとの同時押しです。

スタイラス

各種PDAスタイラス比較
各種PDAスタイラス比較
上からh1920,初代iPAQ,CLIE Nシリーズ
# 手元にCLIE Tシリーズのものがあればよかったのですが(苦笑) リセットピン?
使い道のないリセットピンらしきものが用意されています
# 途中で設計変更があったのかもしれませんね

短さといい細さといい,CLIEのTシリーズを彷彿とさせるものになっています。

決して使いやすいとはいえませんが,本体サイズを考慮すれば最低限の使い勝手は維持していると思います。
# 図体はデカイくせに本機より短いスタイラスしか備えない機種も世の中には存在しますしねぇ(苦笑)

リセット ボタンの項で述べた通り後部が取り外せる構造になっているのですが,あまり意味のある構造とは思えないので,個人的には強度を考えて金属の一体式にして欲しかったところです。
# 重量バランスへの配慮かもしれませんが,CLIEのスタイラスを床に落としてプラスチックのねじ込み部分がポッキリ折れてしまったという苦い経験が頭をよぎります(苦笑)

なお,スタイラスのポップアップなど特殊なギミックは一切なく,CASSIOPEIA系と同様単純に本体側のスタイラスホールに差し込む形になっています。
別段抜きにくいということもありませんし,問題はないでしょう。

タッチパネル精度

液晶の項目から分離してみました。

本機のタッチパネルですが,いかにもiPAQらしく表面に1枚フィルムが貼ってあるかのようなヌタっとしたペンタッチがやや気になるものの,感度精度ともに良好です。
# このタッチが気に入らないひとは,固めの液晶保護シートを貼ると良いでしょう。
# バックライトが明るく,タッチパネル感度もよいので貼っても大きなデメリットにはならないと思います。

お絵描き系のソフトや手書きメモを使っている時に,弱い力でも線飛びすることなく的確な位置に線がひけるので気持ちよく使うことができました。
# ありがちな周辺部の歪みもほとんど感じられません。

タッチパネルというものはペンタップオペレーションが主体であるPDAではもっとも重要な部分であるにも関わらず,感度が悪かったり精度が低いものも少なくありませんから,これは本機の隠れた美点といってもよいでしょう。

2.5mmオーディオ ジャック

PC-262S
SONY PC-262S
2.5mm径のオーディオジャックを標準的な3.5mm径に変換するためのアダプタ
オーディオ設定
オーディオ設定
オーディオ トーン(簡易イコライザ機能)の設定が可能

CFスロットの不在と共に小型化のしわ寄せがもっともきている部分のひとつが,本体上面左側に搭載されたオーディオジャックです。

ポータブルオーディオ機器などで通常利用されている3.5mm径の「ステレオミニプラグ」ではなく,2.5mm径のいわゆる「ステレオ超ミニプラグ」しか利用できなくなっています。

このサイズのイヤフォンはモノラルのものが主流なため入手性はかなり悪いのですが,専用のステレオイヤフォンが標準添付されているので,おとなしくこれを使う分には特に問題はないでしょう。

で,肝心の音質ですが,標準搭載のものは非オーディオ機器に標準添付されているものとしてはなかなか健闘しているとは思うものの,音のヌケがイマイチな感じでオーバーに表現するとS/N比の高い(ノイズの少ない)ラジオを聴いているような印象を受けました。

電車の中などで利用する分には全く問題ありませんが,静かな場所で利用するなら市販の「プラグアダプター」などを利用して通常のヘッドフォンを使った方がよいかもしれません。
# コネクタ周りが大型化する分,とりまわしに不便だったりするのですけれど(^^;

ちなみに私自身は家電量販店で購入した,SONYの「PC-262S」という定価550円のプラグアダプターを利用しています。

オーディオ ジャックと本体自体の音声再生品質に関しては,可も無く不可も無くといったところでしょうか。

j568などに比べるとノイズレベルはかなり低く抑えられていますが,曲間など音声再生が始まる瞬間のプチノイズは入ってしまうようです。
# とはいえ非常に小さい音なので,神経質なひと以外は気にならないレベルだと思います。


他機種と比較して,ボリューム最小時と最大時の差が大きい(≒調整幅が広い)印象があり,ヘッドフォン利用時に最適なボリュームセッティングを出しやすく感じました。
# 最大音量が大きいというよりは,最小側が小さい。


またスタートメニュー→設定(システムタブ)の「オーディオ」から「オーディオ トーン」という名称のiPAQ伝統の簡易イコライザ機能が利用できますが,名称から期待する程の効果はないようです。
# 一応,高音4段階,低音4段階+超低音が設定可能。

スピーカ&マイク

スピーカ

スピーカは初代iPAQと同様5Way ナビゲーション ボタンの下に配置されています。
# 初代は「下」というより「中」でしたが。

とこう書くと音質面は絶望的に思われそうですが,なかなかどうしてサイズの割にまともな音がでます。

H3900シリーズにはやや劣るものの,PDAについているスピーカとしてはかなり優秀な部類に入るのではないでしょうか。

音量もそこそこでますので,ポケットラジオ感覚で出張や旅行時などに活用できそうです。
# 私の場合自宅で風呂に入る時に脱衣場に再生状態で置いておき,浴室で音楽を楽しむことがたまにあるので,うれしい誤算でした。 <サイズ的に期待していなかったのですねぇ

マイク

マイクは本体上面のオーディオ ジャックとSDスロットの間に設置されています。
iPAQ伝統のオートゲイン(感度)コントロール機能も健在でした。

ストラップ取り付け穴

片手での保持方法
こんなふうに持つと片手操作がしやすい……かも

何故かリファレンスガイドなどでも無視された格好になっていますが,本機には海外製品には珍しくストラップ取り付け穴が用意されています。

ストラップは使わないので不要というひともいるでしょうが,本機の場合PocketGearのような金属製の後付けパーツではなく,本体側に穴(と金属棒)があいているだけですから,未使用でも邪魔にならないのはうれしいところ。

小型軽量なマシンは胸ポケットに入れることも多いと思うのですが,ここに入れておくと(本体が軽ければ軽いほど)うっかり存在を忘れてかがみ込んでしまい,突発的に落下耐久試験を行うはめになってしまうなんてことにもなりがちですから,クリップ付きのストラップを利用できるのは大きなメリットといえそうです。

また本機の場合,小型化の代償(バッテリとスピーカの搭載スペースの問題?)か5Way ナビゲーション ボタンが本体の下端に搭載されており,下方向のマージンがないためボタン操作時にどうしてもトップヘビー気味になってしまい,本体を保持しづらくなってしまうという欠点があります。
# 持ち方を工夫しないと片手操作は結構厳しいものが……
# 親指をボタンに,人指し指と中指を本体上部の保持にまわし,同期ポートの突起部分を薬指にのせるような感じで持つと操作しやすいかも?(^^;

短いストラップを利用して適度にテンションをかけてやることで,ずいぶんと操作性が改善しますから,そういった面でもありがたい装備ではないでしょうか。
# 私の場合,長いストラップにクリップを付け,ポケット収納時は長いままクリップ利用。長時間片手操作する場合はクリップを利用してストラップを短く(輪を二重に)して使っています。

各種ポート類

ICカード公衆電話の接続設定
ICカード公衆電話利用時の接続設定
モデムの追加設定に注目

CFスロットを持たない本機の数少ない通信手段である,各種ポート類についてみていきましょう。

充電/同期ポート

本体下面中央には,H3800シリーズ以降のiPAQと同じ形状の同期ポートが『裏表(前後)逆に』搭載されています。

海外のサイトなどを見るに,本ポートはUSB(クライアント)のみの機能しかもっておらず,シリアルの信号線を省くことでコストダウンを図っているらしいので,従来のシリアル機能を利用した周辺機器(キーボードetc.?)を間違って接続しないように裏表逆に配置したのではないかと思われます。 <例によって勝手な推測ですが
# これによって,ジャケット以外のオプション類も全滅状態になるわけですね(苦笑)

シリアルにさえ対応していれば,携帯電話などを接続するためのオプションがサードパーティから登場することにも期待できたのにと思うと残念な限りです。
# 私の勘違いだとよいのですが,名称が「充電/通信ポート」から「充電/同期ポート」に変更になっているあたり望み薄な感じが……(^^;

なお,USB接続によるActiveSync中にインターネットに接続することは当然可能ですから,ActiveSync中にh1920上で巡回ソフトを動かしてデータを取り込んでから外出するといった使い方は可能です。
# もっともこれをやるなら,HandStoryなり「PiloWeb」なりで母艦側で自動巡回したデータを同期した方が合理的だと思いますが(^^;
# 他にも自動巡回してテキストやHTMLデータを吐いてくれる母艦用ソフトってのは,探せば結構ありますしね。

また本ポートは充電ポートも兼ねているので,標準的な極性統一プラグを採用しているACアダプタを接続するための「チャージアダプタ」が標準添付されています。

赤外線ポート

h1920に用意された最後の武器がこの赤外線ポートです。

本体左側面に搭載されているため使いやすいとはいえませんが,ケーブルなしでPDA同士やPC(ActiveSyncを搭載していないマシンでも多分OK)とファイルのやりとりができるのはなかなか便利です。

また都心部であれば,ちょっと周囲を見渡すとオレンジ色の「ICカード公衆電話」が設置してありますから,これを使ったダイアルアップ接続にも意外と重宝します。

試しに私も使ってみましたが,同じ64Kでもギャランティ型のPHS回線(つまりはDoCoMo)よりずっと高速に通信できますので,電話機を探す手間と周囲の視線さえ気にならないのであれば,ちょっとしたメールチェックや自動巡回などには十分利用できると感じました。
# 携帯電話の普及率が上がったおかげで,待ち時間がほとんど無いのも嬉しいところ?(^^;

ちなみに設定に関しては,本サイトの「ICカード公衆電話を利用した赤外線接続」あたりが参考になるかもしれません。
# ISDN用のアクセスポイントを利用することと,モデムの追加設定に「S100=1」(鍵括弧は不要)を入れること以外は通常のダイアルアップ接続設定と同じです。

その他にも通信速度が遅くあまり実用的ではありませんが,秋葉原などで安売り中の「iTAX-irDA」などの携帯電話用赤外線通信アダプタを使ったダイアルアップ接続も利用できます。
# メールチェックなど,速度をあまり必要としない用途にはよいかもしれません。

クレードル

USB同期ケーブル
USB同期ケーブル
コネクタ下面にACアダプタを接続できます
コネクタ比較
USB同期ケーブルとチャージアダプタのコネクタ比較
左が同期ケーブル(ラベルは裏側)
それぞれラベルが裏表逆なため少し紛らわしいのが難点

本機はコストダウンの一環として,クレードルが別売りとなっています。

別売りのクレードルに関しては予算の都合で現在未入手のため現物を見たことはないのですが,スペアバッテリの充電機能を備え,標準的なBコネクタを採用して汎用品のUSBケーブルが着脱可能になっている点などがポイントでしょうか。
# デザインは個人的に気に入らなかったり(^^;;;

USB同期ケーブル

別売りクレードルの代わりに同梱されているのが,このUSB同期ケーブルです。

本体側の充電/同期ポートと接続するためのコネクタに,ACアダプタ接続用のコネクタが一体化されており,同期と充電を同時に行うことができるようになっています。
# ケーブル長は約1m。個人的にはもう少し長い方が嬉しかったかも。

ただこのACアダプタ用のコネクタのおかげで,本体接続時にそのまま机の上におくとコネクタ部(本体の尻の方)が机上から浮いた形になってしまうため,ここにうっかり物や手を置くと本体側のポートを壊しかねないので注意が必要かもしれません。
# まぁ,本体の上に手をついたら先に液晶が割れるだろうという話もありますけど(^^;

また充電/同期ポートの項でも述べましたが,本体側のポートが従来機種と裏表逆になっているため,従来機種との共通パーツを利用しているチャージアダプタと,専用品である本同期ケーブルとで挿入方向が一見逆になっている点はやや不親切かもしれません。
# チャージアダプタはラベル側が表,ケーブルはラベル側が裏と,表示が逆になっています。

ACアダプタ

ACアダプタ
ACアダプタ
相変わらず巨大
これもコストダウンの一環でしょう

従来機との共通パーツです。
ワールドワイド対応ですが,折り畳みのブレードや小型化とは無縁の存在になっています。

保証はありませんが,従来機用のサードパーティ製小型ACアダプタを利用するという手もありそうです。

なお,従来機同様チャージアダプタとACアダプタがゴムパーツで繋がれている点は,紛失防止に役立つ嬉しいポイントといえるでしょう。

搭載ソフト/マニュアル類

アセット ビューア
ソフト関連の数少ない独自要素
アセット ビューア

PCのデバイスマネージャ(ただし情報の参照のみ)にあたる「アセットビューア」,マイクやオーディオ出力の設定を行う「オーディオ」,バックライト輝度調節の「バックライト」を除くと独自要素や独自ソフトは潔いまでに何もついていません。
# 英語版と違い,利用頻度の高いWMPがROM搭載されているのは嬉しい限りですが。

したがって,タスクマネージャやファイラ,バックアップソフト,グラフィックビュアなど必要なソフトは全てユーザ側が揃えてやる必要があります。

ヘビーユーザであれば自前でソフトを調達できるでしょうし,ライトユーザなら標準のソフトだけでもあまり不自由を感じない(かもしれない)ので,潔い割り切り方といってよいかも知れません。

それでもバックアップソフトくらいは付けてほしかったところですが,iPAQのそれは高性能なOEM品だったので,真っ先に削られることになったのでしょう。

CFスロットが使えない関係上LAN接続によるActiveSyncが利用できないため,バックアップにはUSB接続のActiveSyncを利用することになるわけですが,これには死ぬほど時間がかかりますから,シェアウェアを導入してしまった方が後々便利かもしれませんね。
# 参考。「Handangoのバックアップソフト検索結果

なおPIMデータの同期に必要な母艦用の「Outlook 2000」は,削られることなく従来機同様付属CD内に収録されています。
# このあたり本体価格を考えるとお買い得というより,投げ売り同然といえそうな……
# Outlook 2002のバンドルキャンペーンは既に終了しているため,同梱されているのは『2000』です。
# ちなみに同期ソフトの「ActiveSync」のバージョンは未だに3.5のままです。

またソフトと同様,マニュアルに関しても簡略化されており,リファレンス ガイドはCD(PDF形式)のみでの提供となっています。
紙マニュアルは「お使いになる前に」という1枚紙のみで,しかも非常に簡素な内容になっているあたり,初心者には少々不親切な構成といえましょう。
# 個人的には,リファレンス ガイドの内容もあまり充実しているとは言い難い印象を持ちましたが(苦笑)

「iPAQ Soft Collection Selection CD-ROM」収録ソフト

iPAQ Soft Collection Selection CD-ROM
iPAQ Soft Collection Selection CD-ROM
# ネーミングセンスに難アリか?(^^;

1920台限定で本体を19,800円で販売した「h1920新登場記念キャンペーン」と平行して行われていた,「BB SHOP!」経由での通販申し込み特典として,その場でもらえたのがこのCDです。

現在準備中(らしい)キャンペーン第2弾では,何やらCD-ROMが特典で付くという話を小耳に挟みましたが,おそらくはこのCDのことでしょう。

収録ソフトは以下のとおりです。
Namo HandStory Suite 2.3 for Pocket PC(クリッピングソフト)
三省堂 デイリーコンサイス英和・和英・国語辞典(辞書)
JRトラベルナビゲータ for PocketPC 2002(乗換案内)
InfoPix!/InfoPix!Jacket サンプル(多機能ランチャー)
Pocket Mapple Digital(地図)
@irDiary(スケジューラ)

その他,電子書籍やニュース類のサンプル版がいくつか納められています。
# Xiino NewsViewer,Xiino ChannelViewerRoidTime2T-Time Viewerブンコビューア用。

OEM価格が高いと噂される「Decuma Japanese」が含まれていない点は残念な限りですが,本体価格を考えれば大盤振る舞いといえる内容です。
# キャンペーン価格の19,800円からソフトの代金(公称17,000円相当)を引くと,本体価格はわずか数千円ということに(笑)

特に通信機能に弱点を抱える本機の場合,HandStoryが利用できるのは嬉しいところでしょう。
# Webデータやクリップボード内のテキスト,画像などを数ステップでPocket PCに転送でき,自動巡回にも対応しています。データを直接メモリ カード上に転送できるところもポイントでしょうか。個人的にはビュアの動作速度と細かい作りには不満を感じるものの,h1920の必携ソフトといってもよいものです。
# 朝でかける前に本ソフトでデータを取り込んでおけば,通信にリアルタイム性を必要としない用途であれば十分補えると思います。

もっとも初回キャンペーンに話を限定するなら,BB SHOP!経由での通販申し込みにはセキュリティ面で不安を感じたのも確かですので,それを考慮すると人にはおすすめできない感じでしたが……
# IEからインターネットオプションを開いたり,普通にタスクマネージャを呼び出したりできたとだけ書いておきましょう(^^;
# ひょっとすると再起動すると完全に初期化されるとか,特殊な仕掛けがあったのかもしれませんけれど。

とまれ,第2弾のキャンペーンに期待したいところですね。

オプション類

ジャケットに加えシリアル接続を利用したオプションも利用できないため,悲しいほどに何も使えません。

せめて携帯電話接続ケーブルのような物があれば死角ナシだっただけに,コストダウンの結果とはいえ残念ではあります。
# 同じくSDIO非対応のSDスロットしか持たなかったE-700の場合,こうした通信ケーブル類が充実しており重宝したものです。

ただクレードルの項でも触れましたが,クレードルにバッテリチャージャとしての機能が備わっている点は,大いに評価してよいでしょう。

総括

以上h1920の個々の特徴について一通りみてきたわけですが,具体的なイメージはつかめたでしょうか?

であれば,既に買いか見送りかの判断もついたことと思います。
# ありきたりなアドバイスですが,通信を何らかの手段……AirH" Phone,ノートPC,sigmarionIII,携帯電話,ICカード公衆電話etc.で代替できるか諦められるなら買い。無理なら見送りでしょう。
# 壊れても諦めが『つきそうな』価格という点も,気軽に扱えるという意味でヘビーユーザにとっても見逃せない要素のような気がします。サブマシン用途(浮気相手)ってのもありますし。

繰り返しになってしまいますが,本機の最大の特徴はそのサイズと重量であり,価格と割り切りの良さです。

Pocket PCの基本機能に影響が少ない箇所を思い切って省くことによって,インパクトのある小型化と低価格化を実現しているわけです。

ただ,ここで勘違いしてはいけないのは,本機は決して「安かろう悪かろう」なマシンではない点です。
PDAとしての個々の要素を見ていった場合,削らず残した箇所に関しては5万円クラスの機種にも見劣りしない作りになっている点は見逃せません。

現在のPocket PC……特に国内ベンダはハイエンド指向に偏ってしまっており,猫も杓子もCF+SDの2スロット構成を採用し,64MB〜128MBのRAMと32MB前後のFlash ROMといった要素を180g前後の筐体に納めて,5万〜7万の価格帯で販売するというスタイルに固定化されていました。

もちろん需要があってのことでしょうし,大は小を兼ねるのも事実ではあります。
が,実際の利用形態を考えた時,皆がみんなCFスロットやSDIOが必要かというと疑問が残らざるをえません。

メールは携帯電話で十分(でWebは自宅のPC)という人もいるでしょうし,本体に5万円も出せないというひとも少なからずいるはずです。
また,ヘビーユーザでも常にノートPCやキーボード付きのPDAを持ち歩いているので,通信を無理にPocket PCでやる必要がないひとだっていることでしょう。

そういった意味で,現状へのアンチテーゼとして小型低価格マシンに先鞭をつけた本機の意義は大きなものがあると思います。

とはいえ,通信機能の不在は私も含めた声の大きなユーザ層から否定的な意見を浴びるのはわかりきっていたことでもありますし,携帯電話でスケジューラもゲームもカメラも,音楽も読書も辞書も(以下略)という日本においては,小型低価格マシンにどれほどの需要があるのかは微妙な上,そもそも国内のPDA市場はマニア向け市場に留まっている感があるのも確かです。
# ≒市場が成熟しておらず,携帯電話との競合が激しい日本市場ではハイエンド向け以外の市場は存在しない。

日本hpとしてはその辺の事情を認識した上で,「国内販売はない」と言い続けてきたのだと思います。

ではなぜ,Pocket PC 2003(英語版)の発表を月末に控えた時期に発売したのでしょうか?

これは私の勝手な推測になりますが,次期iPAQは1900,2200,5500の3ラインがリリースされるといわれています。
日本hpはこれらの北米でのリリースを間近に控えて,どのラインを日本で販売すべきか(あるいは投入順をどうするか)の情報収集を行いたかったというのが本音なのではないでしょうか?

だとするなら,h5450の投入(と品切れ),H3900シリーズのキャンペーン,h1900シリーズの発売(とこれまた品切れ)と立て続けにアクションを起こしたのもうなづける気がするのです。

とはいえ,ユーザからみれば半年も発売が遅れた上,国内の通信事情に合わせた改良もなく,モノとしてのインパクトがあるのに実機に気軽にふれられないという販売方針には愚痴のひとつもいいたくなるのも確かです。
# たとえそれらの要素が重なって,低価格化が実現していたとしても。です。
# 本当に間口を広げたいのであれば直販では力不足だと思いますし,なにより投入タイミングは重要でしょう。


私にとってh1920は,通信手段を持たないことはやや不満ながらも,コンパクトさと細かい部分の作りの良さ(と衝撃的価格)など欠点を補って余りある機種です。

これで通信さえできれば,『現状で』もっとも理想に近いPDAといってもよい程です。
# あ。Decuma Japaneseと外付けキーボードも欲しいかも(笑)

後に続くのが日本hpになるのかそれとも別のメーカになるのかは問いませんが,本機の示した路線が「半年遅れで通販限定販売してみたら,思ったより売れなかった」なんて理由でついえてしまわないことを祈るばかりです。
# 実際には,所要4日で1920台完売というのは立派なのでしょうが(^^;
# もっとも需要が頭打ちになる心配もありますしねぇ(苦笑)

蛇足

結局iPAQの評価は『今度こそは日本語版も早く出してね』のひとことにつきるわけですが(死)

『サポートと販路の確保もしっかりしてください』ってな亜種もアリ……

個人的には「ハイエンドなh1900シリーズ」ってのもみてみたい気がします(^^;

付録/摘要

長所

短所